
骨になるまで〜日本の火葬秘史
ジャーナリスト伊藤博敏さんが女性セブンに連載している記事へのインタビューが掲載されました。
第9回 墓事情の変化と粉骨化
米ハリウッド映画で埋葬は、墓地に家族親族や友人知人が集り、神父(牧師)の祈りの後、花を添えたマホガニーなどの立派な棺で故人を送るのが一般的だ。最後の審判の際、復活する肉体がないと困るだろうという宗教的観点から土葬が選択されてきた。
しかし、その風習は急速に変わっている。2010年に土葬が約130万人、火葬が約100万人だったが、15年には逆転し、23年に火葬率は約60%、約190万人に達した。日本より緩やかだが米でも多死社会が到来しており、45年に死亡者数は約385万人に達し、火葬率は8割を超えるという予測もある。
無宗教の人が増え、キリスト教徒でも教会に通わないなど宗教意識の変化がそこにはある。同時に葬儀におカネをかけない、あるいはかけられない層が増大した。23年9月、ラスベガスの全米葬儀業界の展示会を視察し、同市の最も古い葬儀社「Palm Mortuaries」を視察した村田ますみ・日本葬送文化学会副会長が印象を語る。
「火葬施設は撮影禁止で家族の立ち会いも禁止です。火葬炉が4基並べられ、遺骨はすぐに施設内の粉骨室でパウダー状にされ、ビニール袋に包まれて依頼元の葬祭ホールに送られます。そこで骨壺に入れられ、家族に渡されるというシステムでした。驚いたのは棺が燃焼効率のいい段ボールであったこと。木製よりも安く約200ドル。火葬率の上昇で米葬儀単価も下がっていて、Palm社の最も安いDirect Cremation(直葬)は2600ドルでした」
葬儀の簡素化簡略化は米も同じということだ。そして火葬は全世界的に増えており、英火葬協会発表(21年)の国別火葬率は日本の99・9%を筆頭に、台湾(93・7%)、香港(93・3%)と続く。驚くべきは韓国の急増で、火葬を進める法改正などによって1991年に約18%で土葬中心だったものが、05年に50%を超え、11年に70%に達し、現在、90・6%でほぼ火葬といっていい状況だ。
米以外のキリスト教国もデンマークの85・7%を筆頭に、チェコ(84・6%)、スロベニア(84・5%)、スウェーデン(84・3%)、スイス(80・3%)と続き、英が79・8%,カナダが74・8%、独が73・0%だ。中国の数字は示されていないが、中国民生省は21年末時点で火葬率59%と発表しており、韓国同様、急上昇している。
火葬大国日本は火葬炉でも高性能を誇る。
火葬炉には金属棒を張り巡らせた格子の上に棺を乗せるロストル式と、主燃料炉に棺を乗せた台車を移動してバーナーで棺を台車ごと燃焼する台車式の2種類がある。遺骨が原型のまま残